2003年03月09日

売上の質

はじめに

バフェットの投資には2つの大きな柱があると思います。ひとつは企業の事業内 容をよく理解すること、もうひとつは経営者をよく知ることです。残念ながら私 たちには経営者と直接会うことも、話すこともできません。無い物ねだりをして も仕方ないですから、経営者を知ることについては、今のところきっぱり諦める ことにしています。そうすると、企業評価の的は私にできること、つまり企業の 事業内容をよく理解することに絞られます。そこで今回は、事業内容を理解する うえでも重要な要素、売上の質についてお話したいと思います。

売上には質がある

みなさんは1億円の売上はみな同じだと思っているでしょうか。確かに 1億円は1 億円です。福沢さんが1万人いれば1億円なのですから。でも、例えば宝くじで当 てた1億円と、手に職をつけて稼いだ1億円とでは、果たして同じといえるでしょ うか。違いますよね。何故なら、宝くじを当てたことで得た1億円はその場限り の1億円であって、その次を期待させる収入ではないのに対して、手に職をつけ て稼いだ1億円は、その後も収入を期待させるものだからです。

これは企業でも同じです。売上と一言で言っても、いろいろな種類の売上がある のです。それこそ星の数ほど。

売上のタイプ

売上のタイプにはいろいろな種類があります。そのタイプを、今回は3つの視点 を元にして考えてみます。

頻度

毎日~毎月~毎年~数年に一回~一生に一度

必需性

必需品~必需品に近い~普通~贅沢品に近い~贅沢品

継続性

一生~数年~1年~1ヶ月~一回限り

新聞社の例

例えば、新聞社を考えてみましょう。扱っている商品は"新聞"です。新聞は毎日 朝夕2回がほとんどです。購入頻度は非常に高いです(実際は毎日宅配してもらっ て月払いですが)。新聞は無くても生活できますから必需品では無いですが、情 報化社会の現代においては比較的必需性の高い商品とも考えられます。また、今 月は朝○で来月は○売、その次は毎○…と新聞をコロコロ変える人は滅多にいま せん。つまり、新聞は非常に継続性の高い商品なのです。

こうして"新聞"の商品性を考えてみると、頻度、必需性、継続性がいずれも高く、 新聞から得られる売上および利益は将来も継続しやすいと考えられます。つまり、 今その新聞社が儲かっているなら、来年もやっぱり儲かっている可能性が高い、 ということです。ですから、"新聞"を売ることによって得られる売上は質が高い、 と考えられます。

住宅販売の例

一方、住宅を販売する企業を考えてみましょう。住宅を購入する機会は非常に限 られています。普通の人なら一生のうちに1、2回程度でしょう。住宅は生活に欠 かせないものですから必需性は極めて高いですが、 1回目の購入から2回目の購 入までの期間が非常に長いこと、そもそも2回目が無い場合も多いことから、1回 目に購入した企業から2回目も…ということにはつながりにくいのです。つまり、 継続性は極めて低いということになります。

住宅は必需性は非常に高いのですが、頻度、継続性が低いため、住宅販売による 売上はその場限りの売上となります。こういったその場限りの売上からは、将来 の売上を期待することはできないため、売上の質は低いと考えられます。

長期投資に適しているのは ストック型 VS フロー型

2つの例を考えてみましたが、長期投資にふさわしいのは"新聞"でしょうか。そ れとも"住宅"でしょうか。私は、"新聞"のほうが長期投資にふさわしいと考えて います。

"新聞"の例のように、頻度が高く、継続性の高い売上は、ストック型の売上と言 われます。獲得した顧客からは継続して売上が得られ、新規に顧客を開拓した場 合、売上が上積みさせることになるからです。こうした売上は、過去の実績がそ のまま将来にも当てはまりやすいため、長期投資のように長期間保有するリスク を負う投資方法にとっては非常に重要です。

一方、"住宅"のようにその場限りの売上は、フロー型の売上です。今年100棟売 上げても、来期はまたリセットして0からスタートしなければならないからです。 こういった商品(サービス)を扱っている企業では、単に収益をみるだけではなく、 営業方法を注意深くみる必要が出てきます。つまり、組織としてしっかりとした 営業が出来ているのか、前期の売上を来期も、将来に渡っても続けていける体制 が出来ているのか、そういったことをチェックする必要が出てくるのです。

売上の質にはまだまだいろいろな要素がある

今回は"頻度"、"必需性"、"継続性"という、3つの視点で売上の質を測ってみま した。ただ、売上の質は上記3つがすべてではありません。シェア、ブランドや 特許、他の企業が作れないものなど。企業が扱う商品(サービス)に他社を圧倒す る競争力がある場合も、その商品(サービス)から得られる売上の質は高いと考え てよいでしょう。

こういったことも加味したうえで企業の売上の質を考えてみてください。その企 業の売上の質は高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。数字に質を加え ることで、投資の幅は大きく拡がると思います。私自身、まだまだ実践できてい ないですが、今後少しずつでも企業分析レポートに取り入れていきたいと思いま す。

(なお、新聞は過去の古典的例として思い浮かびやすかったので例に使いました が、今は活字離れが進んでいるため、素直にストック型とは言えなくなってきて います)

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