2003年08月09日

私の投資法

はじめに

思ってみれば、自分の投資法を簡潔にまとめたページが無いことに気が付きました。 そこで、2003年7月現在の自分の投資法についてまとめてみました。

なお、ここで紹介している投資法は、あくまで数多く存在するであろう バリュー投資法のうちの1つの形に過ぎません。 これが最善でもなければ、最悪でもないでしょう。 言うなれば、今の私にはぴったりな投資法です。 ですから、みなさんにも合うかもしれませんし、もしかしたら合わないかもしれません。 でも、そんな時はこのことを思い出してください。 バリュー投資の父、ベンジャミン・グレアムから巣立った多くの優秀な投資家は、 基礎こそ同じものの、それぞれに異なった投資法で優秀な成績を収めていることを。 重要なのは、自分に合った投資法で投資を行うということです。 その参考に私の投資法が少しでもお役に立てれば嬉しいです。

1.割安で、優良で、成長性のある企業にのみ投資する

これが私の投資の大原則です。これまで優秀な業績をあげていて、 財務内容が健全で、尚且つこれからも成長が続きそうな企業の中から、 割安なものにだけ投資するのです。

割安な企業に投資する

仮にAという優良企業があったとします。 財務内容はすこぶる健全、利益率も高く、成長性も10%程度ありそうです。 この企業AがPFCFR7倍で売られていたとします。 そうそう、私は利益よりもCF(=キャッシュフロー)を重視します。 何故かというと、利益は会計である程度操作できてしまうのですが、 CFは操作できないからです。 CFに馴染めなければ、PFCFRをPERと読み替えてくださいね。

先進国の株式市場では、PFCFRは平均すると15~16倍程度で推移してきました。 そうすると、PFCFR7倍というのは、過去のPFCFR平均値の1/2ということになります。 このように低い評価を受けている企業は、さらに株価が下がろうとすると、 さすがに割安だろうということで買いが入りやすく、なかなか株価は下がらなくなります。 まず、この下値が限定されやすいというのが、1つ目のポイントです。 投資でもっとも大切なことは、まずは「損をするな」です。

成長性のある企業に投資する

さらに、この企業Aが目論見通り10%成長を果たしたとします。 そうすると、今まで7倍だったPFCFRは、FCF(=フリーキャッシュフロー)の 増加により6.4倍に低下します。

ただでさえ低かったPFCFRがさらに低くなってしまいました。 あんまりにも低くなると他の人も放っておけなくなるので、 株が買われることになります。 PFCFRは元の鞘、つまり7倍程度にまた戻ってくることになるでしょう。 言い換えれば、株価は10%上がるということですね。

つまり、企業が低評価の時には、その割安性が一種の触媒になって、 企業の利益成長がそのまま株価上昇に反映されやすいということです。 これが2つ目のポイントです。

優良な企業に投資する

長期的には株価は企業の価値にリンクします。 しかし、そのリンクがゆるいために、 正しく評価されるまでには往々にして時間が掛かります。 短く見積もっても、5年程度は見ておかなくてはなりません。 優良企業に的を絞っているのは、この時間に耐えられるだけの 体力がある企業に的を絞るためです。

また、このような優良企業であれば、利益成長による株価上昇だけではなく、 正当な評価を受けることによる株価上昇の恩恵にも いずれ授かることができます。 これが3つ目のポイントです。

この企業Aのような企業に投資して、 芽が出るのをじっと待つのが私の投資法です。

実際にはDCF法による企業価値と時価総額との比較によって 割安かどうかを判断しているのですが、 基本的な考え方は今までお話してきた通りです。

ちなみにこの企業Aに投資した場合、 10%成長が続き、5年後に正当な評価が得られたとすると 株価はなんと3倍になります。あはは、すごいでしょ?

まとめ

本来の価値よりも1/2以下で売られている割安な企業に投資する
(値下がりリスクが少ないよ、いずれ正しく評価されるよ)
 
成長が今後も続きそうな企業に投資する
(成長はいずれ株価に反映されるよ)
 
今現在、優良な企業に投資する
(将来優良になる企業を探すよりも楽でしょ?)

2.優良企業像

優良企業、優良企業っていっても、どんな企業が優良企業なのかわかりづらいですよね。 そこで、私の優良企業像をお話します。

収益性
営業収入FCF利益率 5%以上
(売上高経常利益率) (10%以上)
総資産FCF利益率 10%以上
株主資本FCF利益率 15%以上
(ROA) (10%以上)
(ROE) (15%以上)
健全性
株主資本比率 50%以上
有利子負債比率 50%以下
流動比率 200%以上
固定比率 50%以下
成長性
成長率(今後5年以上) 年10%以上
その他

・何らかの強みを持っている (シェアが3位以内、ニッチの雄、強力なブランド、など)

ひと言でいうならば、何らかの強みを持ち、利幅をしっかり確保でき、 倒産など到底考えられず、これまでしっかりした実績を残し、 今後も成長しそうな企業、これが私の優良企業像です。

もっとも重視する指標

私が企業をみるうえでもっとも重視する指標は、総資産FCF利益率(利益ベースではROA)です。 株主資本FCF利益率(利益ベースではROE)よりもこちらを重視します。

何故株主資本FCF利益率(利益ベースではROE)じゃないかというと、 企業が活動に使用するのは、株主資本と負債を足し合わせた総資産だからです。 株主資本だけで活動するわけではありません。 実際に活動に使用した資金と、そこから生み出された利益とを 比較するのが、一番企業の力を測るのに適していると思うのです。

例えば、ファンド・マネジャーについて考えてみてください。 自己資金50億円、借金50億円、合計100億円を株式で運用したとします。 1年で獲得した利益は10億円。

さて、このファンド・マネジャーの、 株式運用能力を測る指標としてもっとも適切なものはどれでしょう? このファンド・マネジャーの本質的な運用能力は、 利益÷運用総資産の10%なはずです。 レバレッジによるかさ上げは本質的な運用能力とはまた別次元の話です。 企業の場合も同じです。

また、本当に良い企業というのは、儲かっていますから、 どんどん財務内容が良くなるんです。すごく儲かっているはずなのに、 財務内容が悪くなるような企業は、良い企業ではあるかもしれませんが、 まだまだすっごく良い企業とは言えません。

本当に良い企業は、株主資本比率がどんどん改善されて良くなっていきます。 そうすると、ROEはROAの値に引っ張られてきます。 株主資本比率が100%なら、ROE=ROAですよね。 ですから、優良企業について長期的に考えるなら、 総資産FCF利益率(利益ベースではROA)のほうが適切だと思うのです。

規模

私は、優良企業であるかどうかに、企業の規模は問いません。 企業の規模は、市場規模に依存するからです。 すべては市場規模と企業規模の関係、市場の成長性と市場内での企業の成長性(シェア) で決まります。 市場の大小、企業の大小は、個人投資家にとっては意味のあることではありません。 (運用資産が100億円を上回るような機関投資家であれば別ですが)

3.企業価値の算出方法

バリュー投資を行う場合、何はともあれ企業価値を算出しなければなりません。 でないと、バリュー投資は名前倒れになってしまいます。 価値と価格とを比較するからこそ、バリュー投資なのですから。 そこで、私の企業価値の算出方法をご紹介します。

3.1.FCF

私は純利益よりもFCFを重視しています。FCFは人によって定義が異なる場合がありますから、 まずは私のFCFの定義を示します。


FCF = 営業CF - 維持投資

事業投資
   = 有形固定資産の取得額 + 無形固定資産の取得額 + 敷金・保証金の支出額
   = 新規投資 + 維持投資

新規投資

新規出店のためなどの投資です。新規出店であっても、 利益の出ていない事業である場合は新規投資に含めず、 コストと捉えて維持投資としてカウントしています。

また、店舗等は時間とともに必ず劣化して価値が減ってしまいますから、 全額を新規投資としてカウントするのではなく、1割引きしてカウントしています。

維持投資

店舗の改装費用など、今の売上や利益を維持するための投資です。 小売業における物流センターなど、売上アップに貢献しないものは すべて維持投資としてカウントしています。

事業への投資は新規投資と維持投資とに大別できますが、 この切り分けはかなりわかりにくいため、 結構いい加減に切り分けています(^^;。 その代わり、原則として良くわからないものは すべて維持投資(コスト)とみなし、 投資判断に誤りがあったとしても、過小評価で済むようにしています。


修正営業CF = ( 税引前営業CF ± 修正値 ) × 0.5

修正FCF = 税引営業CF - 維持投資

営業CFは、売掛金、買掛金、未収金、未払金、棚卸資産の 増減に大きく影響を受けます。 そこで、各期でこれらの影響にバラツキがあった場合、 バラツキをならすために修正します。

また、税金も支払い時期の関係などで各期でバラツク場合がありますので、 税引前の営業CFを求めて、それを×0.5して営業CFを求めることで、 バラツキを無くしています。 ×0.6じゃなくて×0.5なのは、計算を楽にするためと、 これまた過大評価を避けるためです。

3.2.予想収益率

予想収益率は、ピーター・リンチやジョン・ネフといった バリュー投資家が愛用したといわれる指標です。

予想収益率 = 成長率 + 配当利回り

PER
 (≧2であれば非常に良い投資)

私はこの指標を少しだけいじって、企業価値の簡易算出に使っています。

一株企業価値 = 成長率 + 配当利回り

PFCFR
×株価[円]

私は、成長率、配当利回り、割安度という、人にもっとも注目される 各指標をバランスよく比較しているこの指標が好きですし、 とても素晴らしいと思っています。

使用している指標の注目度から、長期投資としては比較的短い期間で 株価は価値に収束すると思っていて、 5年程度で収束すると仮定して投資パフォーマンスをそろばんしています。

3.3.DCF法

私が主に使っている企業価値算出法は、 DCF法をアレンジしたものです。

DCF法では企業の価値を、企業が将来生み出すFCFを 現在の価値に直したものの総和と定義しています。

私はこの企業が将来生み出すFCFを現在の価値に直したものの総和に、 ベンジャミン・グレアムの純流動資産(をちょっと厳しくしたもの) を足し合わせたものを企業価値としています。

純流動資産 = 流動資産 - 負債
(本来なら純流動資産 = 流動資産 - 流動負債なのですが、 私はこれを運転資本と呼び、上記を純流動資産としています)


企業価値
   = 純流動資産 + FCF × 成長倍率 × ( 1 - 割引率 ) +
    FCF × 成長倍率2 × ( 1 - 割引率 )2 + … +
    FCF × 成長倍率10 × ( 1 - 割引率 )10

教科書に書かれているDCF法とは違い、 私は将来FCFには10年分のFCFしか足し合わせません。 これは、ひとつは往々にして企業の成長率を見誤るため、 過大評価しないようにするためです。

もうひとつは、短期的にも長期的にも投資収益を安定させたいためです。 ほとんどの投資家は近視眼的ですので、あまりにも超長期で考えないと 価値がわからない企業は、他の人に気づいてもらえずに 長期に渡って放置されるリスクがあるのです。

割引率には、10年物長期国債の利回りを使用しています。 教科書に書かれている割引率の算出方法は、 一部におかしな数値を使っているのと、 計算が難しい割にその効果が無いため、 私はすっかり忘れてしまいました(笑)。

DCF法による企業価値算出は、EXCELなどの表計算ソフトを使うと とても楽ちんです。 電卓を使って計算しようとするとすごく大変なので、 みなさんのパソコンにも表計算ソフトの1つや2つ バンドルされてあるでしょうから(<いや、2つは無いって)、 是非パソコンを活用して楽をしてください。

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